妊婦と読書 ― ことばは、今も。
本好きOLが妊婦になりました。妊娠生活と、読書記録を綴ります。
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近松門左衛門・著、諏訪春雄・訳注「曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の綱島」(角川ソフィア文庫)
「大学時代、近世文学のゼミに所属していました」と私が話すと、よく
「近世…近松門左衛門か何かですか?」と訊かれる。
「いいえ、卒論では西鶴の作品を扱いました」と言うと、
「ほう、心中物ですか」と言われる。
どうも、「近世文学=近松門左衛門=心中物」、という図式ができあがってしまっているようだ。
それならば、と近松の傑作三編を読んでみた

曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島―現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
(2007/03)
近松 門左衛門

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もっとロマンチックな純愛悲話なのかと思いきや、どうも金と世間体がストーリーの大きなキーワードになっていて、ああ残念、近世文学だなあ、と感じた。

金が重要になってくるのは、相手が遊女だけに、会うにも自分のものにする(身請けする)にもお金がかかる以上、仕方がない。金を横領したり、金銭トラブルで追いつめられたりして死を選ぶなど、心中の直接的な原因は愛ではなく金なのだ。

そして世間体。
最近よく「男気」という言葉を耳にするが、現代と全く同じ意味で「男気」という言葉が何度も使われている。主人公の男たちにとっては、世間に対し、いかに男気のあるところを見せられるかが重要であり、男としてのメンツをつぶされるのが何よりつらい。そこで恋敵が遊女の前で主人公の悪口を言ってメンツをつぶそうとする、とうのがお決まりの展開となる。しかし、金を貸したの借りてないので大の大人が取っ組み合いの喧嘩をしたり、いつも寝ているくせに人が来た時だけ仕事をしているふりをしたりと「男気」の前に「大人気」ない人たちがたくさん出てくるのがおかしい。
主なあらすじは以下のとおり。

「曾根崎心中」…醤油屋の徳兵衛はある女性と結婚させられそうになるが、実は遊女のお初と恋仲である。女性との結婚を断るために多額の金が必要となるが、徳兵衛は苦心して集めた金を九平次にだまし取られたうえ、悪い噂を流されてしまう。追いつめられた徳兵衛はお初と心中道行に出る。

「冥途の飛脚」…飛脚の忠兵衛は遊女梅川に夢中になり、客の金を横領して使い込んでいた。金を横領された八右衛門は遊女たちの前で忠兵衛の悪口を言いふらす。かっとなった忠兵衛は屋敷に届けるはずだった大金を梅川の身請け金に使ってしまい、梅川と逃避行に出る。しかし自分の生まれ故郷まで逃亡したところで逮捕される。

「心中天の綱島」…紙問屋の治兵衛は妻子ある身でありながら遊女の小春に夢中である。しかし、治兵衛を心配する兄の計らいもあり、小春との縁を絶つことを決意する。その後、小春に望まぬ身請け話があり、小春が自殺しようとしていることを知る。治兵衛は小春を救おうと金の工面をするが、それを舅に見られてしまう。舅は激怒し、治兵衛と妻を離婚させる。絶望の末、治兵衛は小春と心中する。

話の先が読めないという点で「心中天の綱島」が一番面白かった。
夫を奪う憎き遊女の命を自分の着物を売ってまでしてなんとか救ってやろうとする、お人よしの妻、いつまでも治兵衛を心配する弟思いの優しい兄、自他ともに認める阿呆である三五郎、そしてダメ男の典型のような治兵衛とそれぞれのキャラが立っていて、面白い。








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安野モヨコ「美人画報」(講談社文庫)



美人画報 (講談社文庫)美人画報 (講談社文庫)
(2004/11/16)
安野 モヨコ

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今から15年ほど前に「VOCE」で連載していた、安野モヨコの美容エッセイ。
「15年も前の美容エッセイなんて読んだって、古くて意味ないんじゃ…」とつっこみながらも読んでみると、ちょうどモヨコ氏が今の私と同い年だった頃のエッセイなので親近感も湧くし、ファッション誌をだらだら眺めているような感覚で、モヨコ氏のおしゃべりとイラストを見ていると、ちょっと楽しい。

「美容院に行くといつも自分の希望通りの髪型にならない」とか、「部屋をきれいにしようと思いつつ、すぐ物であふれてしまう」とか、共感できる自虐ネタが多い一方で、高級ブランド品をドカ買いしていたり、エステやヘアカットのために海外に行ったりと「ふつうのOLにはこんなことできないよ!」と言いたくなるようなセレブぶりが綴られていて、そのギャップが激しい。

それにしても、「美人」を極めるには、ファッション、メイク、ダイエットから始まって、規則正しい生活、品のある言葉づかい、きれいな部屋作りetc…とやらなきゃいけないことがなんて多いの!!
まあ、別に今のままでも死ぬわけじゃないし、このままでいっか、と結局面倒くさくて何もやらないので、この手の本を読んでも何も効果がないのだ、とほほ。


今野晴貴「日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?」(星海社新書)
「日本には過労死するほど仕事があって、自殺するほど仕事がない。」

過酷な労働を強いては労働者を使い捨てていくブラック企業が増え、過労や鬱病に陥る人がいる一方、大卒で何十社採用試験を受けても就職先が決まらない人がいるという事態。
その原因と打開策を探るべく、読んでみたのがこちらの本。

日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか? (星海社新書)日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか? (星海社新書)
(2013/04/26)
今野 晴貴

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本書では法律の説明(労働基準法と労働契約法の違い)から始まり、労基署、カウンセラーの実態、資本主義の歴史など幅広い分野を扱いながら、日本の労働において違法がまかり通る原因を探っていく。

話が多岐に渡っているせいか、分かりにくい印象がする本だが、キモとなるのは後半部分で、日本型雇用と労働組合が大きなキーワードのようだ。

日本の労働組合は終身雇用と年功序列という日本型雇用を獲得する代わりに、労働者の仕事の範囲を無制限にすることを甘受する方向に動いてしまった。そして従来の日本型雇用が崩れてしまった今、労働範囲の無限性のみが残ってしまっている、というのである。
確かに我々20代の親世代(アラ還)にとっては、ワークライフバランスなんて言葉もなく長時間労働が当たり前。それでも「ブラック企業」と言われなかったのは、自分たちの雇用と賃金が保障されていたからなのだろう。

また、日本の労働組合は企業ごとに組織されてきたため、自社の利益のみを獲得することにかまけて業界全体の共通規制を作ることができなかった。これらが企業間格差の原因となっているといえる。


本書に繰り返し書かれているのは、自らが勝ち取ろうとしなければ、労働者の権利は獲得できないということだ。しかし、企業と戦うのに、労働者一人だけで立ち向かってはあまりに弱い。労働組合や何らかのサポート団体に属することが重要である。
労働問題に関わらず、現在は集団的なつながりが薄れ、各々が孤立する傾向が強い。そして、若者は労働組合を過去のもの、古臭いものと見がちだが、個人では非力だと認識することは大切である。集団で共通規制を求めていくべき、という考えには賛成だ。

また我々は単純に「正社員化を進めるべき」、などと主張しがちだが、これは正社員化を理由にした労働強化、その結果の過労死につながりかねない。短絡的な主張に陥らないよう、労働者側の思考力も求められているのだろう。

朱川湊人「花まんま」(文春文庫)
花まんま (文春文庫)花まんま (文春文庫)
(2008/04/10)
朱川 湊人

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「ALWAYS 三丁目の夕日」時代の大阪を舞台にした、ノスタルジックでちょっと不気味な短編集。
昭和の風景を描きながらも単なる懐古主義ではなく、差別や貧困、人の死や病気などの不幸を描き、全体的に影のある小説である。
全6篇のうち、印象深かった最後の1篇を紹介。

「凍蝶」
なぜかはわからないが幼い頃から差別的な扱いを受け、友達がいない小学生「ミッちゃん」と、
病気の弟を持ち、家計を助けるため、沖縄から大阪にやってきて「喫茶店」で働く18歳の「ミワさん」。
ともに独りぼっちの二人が墓地で出会い、交流を深めていく。

「ミワさん」は「ミッちゃん」に凍蝶の話をする。
沖縄のとある島にいるというその蝶は、人目のつかない場所にある木にとまり、冬も死ぬことなくひっそりと越冬をするのだという。

「ミワさん」は「ミッちゃん」にある嘘をついており、それが原因で二人は離れ離れになってしまう。
ラストシーンでの「ミワさん」の姿はとても妖艶で、哀れで、まるで蝶のようだと「ミッちゃん」は思う。

二人の将来は決して明るいものではないだろう。
しかし、社会の中で光を浴びることのない二人がひっそりと、でもたくましく「凍蝶」のように生きる様子が切なく胸に響く。
自己紹介
はじめまして。
遅ればせながら、読書ブログを始めることにしました。
読書好きのアラサー女性です。
日本の小説を中心に、自分の読んだ本(できれば雑誌も!)を気の向くまま、紹介していきたいと思います。

テーマは、「非・文脈棚的読書」。
「文脈棚=関連性のある本を続けて読んでいくこと」ではなく、あえて何の脈絡もなく本を選んで読んでいきます。

タイトル名は、私の大好きな石川啄木の短歌、
「かの時に 言ひそびれたる 大切の 言葉は今も 胸にのこれど」
からとりました。

これからよろしくお願いします。