妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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橋本紡「流れ星が消えないうちに」(新潮文庫)
痛みを抱いて、生きていくということ。



主人公の奈緒子は、高校時代からの恋人である加地君を事故で失う。
彼は旅行先で、奈緒子の知らない女の子とともに亡くなったという。
恋人を失った悲しみと、彼が人生の最後に他の女の子と一緒にいたという受け入れがたい事実に苦しみ、
奈緒子は加地君の死後1年以上たった今でも、玄関でないと眠ることができない。

そんな奈緒子の新しい恋人となったのは、奈緒子と加地君の高校時代からの友人、巧君だ。
巧君は友人の恋人を奪ったことによる罪悪感と、未だ加地君のことをひきずっている奈緒子の思いに
もがき苦しみながらも奈緒子との日々を大切に過ごしている。

繊細で不器用な「文化系男子」でありながら、心の奥に熱い思いを秘めた加地君。
実直で明朗な「体育会系男子」だけれど、実は弱さも抱えている巧君。
おとなしいようで芯の強さをもっている奈緒子。
いずれも好感のもてる登場人物ばかりで、「死」という救いようのない苦しみを抱える奈緒子と巧君の姿に
胸がぎゅっと苦しくなる。

更に、家庭崩壊の危機にある奈緒子の両親や妹との関係性も描きながら、物語は展開していく。

死者を交えた元友人との三角関係、という設定はどこかで読んだことがあるな、と思ったら、
村上春樹の「ノルウェイの森」と似ているのだった。
ただ、こちらの小説のほうがいい意味で平凡で、個人的には好きだ。

それぞれ異なった魅力を持ち、一生懸命に生きている登場人物たち。
嫌みのない、やわらかな文体。
そして、タイトルにも関連している、奈緒子と加地君の、美しいプラネタリウムのエピソード。

そんな繊細な設定の中だからこそ、加地君の死と、彼に対するもやもやとした解決しない疑惑が、痛みとなって響く。
奈緒子と巧君は、決して加地君のことを忘れないだろう。
忘れないけれど、加地君のことは、いつか過去の思い出へと昇華していくことになるだろう。
それは決して薄情なことではなく、人間が生きていくために必要な、ある種の強さなのだろうと思う。
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