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柚木麻子「本屋さんのダイアナ」(新潮社)
惜しくも先日の「本屋大賞」は逃したものの、方々で絶賛されていたので、前から読みたかった本。



16歳で出産したキャバ嬢の母と二人暮らし、「大穴(ダイアナ)」というDQNネームをつけられたせいで、常に周囲から馬鹿にされ、人とうまく打ち解けることができない、ダイアナ。
教養と品をまとった編集者の父と料理教室の先生の母に大事に育てられ、優等生として周囲から慕われている、彩子。
全く正反対の環境にいる二人は小学生時代に出会い、「本」という共通の趣味から瞬く間に親友となる。
しかし、お互いの環境の違いから些細なことで仲たがいをし、疎遠になってしまう。それでも二人は、常に心の片隅でお互いのことを気にかけ続け、成人してから、再びめぐり合う―。

本の紹介のされ方や、帯を読んだ印象から、これは儚くて強固な女の子独特の友情を描いた作品で、最後は前向きな気持ちにさせてくれる物語なのだろう、と期待して読んだ。しかし、私が期待していた話とは大きく異なり、とてもひりひりした読後感の作品だった。

まず感じたのは、この作品に漂う男性への強い不信感である。女を踏みにじる男、だらしない男。この小説には許しがたい男性ばかりが次々と現れ、読者の気を滅入らせる。「男性=強者、悪、加害者」「女性=弱者、善、被害者」というはっきりとした二項対立が感じられ、さらにまるで男性と付き合うのが悪いことのように描かれているシーンも目につく。
どうしてこんな小説になってしまったのだろう?とあまりに気になったので、作者の柚木氏へのインタビュー記事を探してみたところ、「今回の本は、現代の女の子を取り巻く性的な問題を取り上げようというのが出発点だった」とおっしゃっている記事を見つけ、さらに巻末の参考文献欄に、デートレイプの本が挙げられていたことから合点がいった。つまり、この本を単なる女の子の友情物語と捉えること自体が誤っていて、作者の意図は他の方向性にも向いてたというわけだ。

もう一つ気になったのは、呪われるべき運命にあるのはダイアナのほうだと読めるような本の帯。私が読んだ印象では、むしろ彩子のほうが「呪われた運命」であるように感じた。自分の意志とは関係なく多感な時期に中学受験をさせられ、温室育ちで世の汚いもの、危険なものからの逃れ方を知らずに育ち、貴重な大学生活を男に狂わされ、編集者になりたいという夢を断たれた(最後のシーンで出版社への就職を目指すとは言っているが)彩子。特に大学時代の彩子の姿は、あまりに痛々しい。頑張り屋さんでまっすぐなのに、それが報われないおかしな方向に進んでいるのはまさに呪いである。私には、「彩子が呪いを解くまでの物語」として強く印象に残った。

と、なんだか批判するようなことをつらつらと書いてしまったが、この本の、特に後半部分には勇気をもらった。好きなのは、どちらも引用部分だが次の言葉である。
「私に命令できるのは、この世界で私ひとりだけ・・・・・・。私だけが私のすすむべき道をしめすことができる・・・・・・」
「自分の希望どおりにまっしぐらに進める人は、もちろんしあわせだと思いますが、たとえ希望どおりに進めなくても、自分にあたえられた環境のなかでせいいっぱい努力すれば、道はおのずからひらかれるものです。」

本の中に登場する、昔読んだ少女小説の数々も懐かしく、かつて文学少女だった私のような大人にはたまらない。


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熊代亨「『若作りうつ』社会」(講談社現代新書)
化粧品をはじめとするアンチエイジング商品が巷にあふれ、芸能人の加齢を劣化と揶揄し、年齢を感じさせない中年女性が美魔女ともてはやされる――多くの人が年を取ることを忌み嫌うこの社会に違和感を覚えるのは私だけではないだろう。

そこで手にとったのがこちらの本。



40代でありながら20代の頃と同じペースで頑張り続け、うつ病になった女性や、40歳になっても「自分探し」から抜け出せない男性。筆者はこういった「うまく年を取れない」人たちが精神疾患を抱えてしまった例を挙げ、「若作りうつ」と名付けている。
「若作りうつ」の背景には、次のようなことが考えられるという。
・工業化社会の発展により、大人の働く場所と子どもの育つ場所が分離し、子育てにおいて父親が不在となってしまった
・死や老いの受容プロセスであった宗教が失われ、通過儀礼も形骸化してしまった
・病院で生まれ、病院で死ぬ人が大半を占め、死が非日常のものになってしまった
・様々な年齢の人と強制的にかかわらざるを得なかった地域社会が失われ、孤立した単身世帯、核家族ばかりになった
・上記のような状況を踏まえ、サブカルチャーやマスメディアが未成熟社会を促進させてしまっている
・上記のような状況により、バランスの良いライフサイクルが送れなくなっている

話題が拡散し過ぎていてまとまりに欠ける印象だが、いすれもまあそうなのだろうと納得のいく話ではある。
我々が加齢を受け入れがたくなっている要因は、年長者のロールモデルが見えにくいことであり、ありきたりだが、いろいろな世代の人が交流できる場を設けるのが良い、というのが結論といえそうだ。

個人的に、第5章のライフサイクルの話は、アラサーの身として、痛感するものがあった。
アイデンティティの確立に勤しむ思春期が延長して、アラサーになっても「初期成人期」に移行でない人は多いのではないか。自分磨きの段階から抜け出せず、「結婚して自由がなくなったら嫌だ」と思い、パートナーをはじめとする家族に重点をずらしたライフスタイルに移行できないのは、その典型的なパターンといえよう。
そして「長すぎる思春期」は自由なようで、(まぁ、エンジョイしている人もいるかもしれないが、少なくとも私から見ると)しんどい状況なのだ。
「老齢」にはまだ意識が及ばないが、結婚して子どもができれば次のステップに強制的に進めるのではないかと思ってしまうのは、独身者の幻想だろうか。

デジタル版『スターウォーズ』

上田秋成・著、井上泰至・訳注「春雨物語」(角川ソフィア文庫)
久しぶりにじっくり古典が読みたくなって、手に取ったのがこちら。


秋成というと『雨月物語』が有名だが、次に有名なのがこの『春雨物語』だろう。
十作品を収めた短編集だが、歴史物語、怪異小説、歌論と作品がバラエティに富んでいるので、現代人が読んでも飽きずに楽しめる。ただ、純粋な物語というよりは、作品や登場人物を通じて秋成が自分の主義主張を行おうとしているケースが多いように感じられる。
各作品の概要は下記のとおり。

・血かたびら
平城天皇と薬子の変を中心に描いた歴史小説。話の展開にとりとめがなく、またこの平城天皇が何とも頼りない。表題は罪を問われて捕らえられ、恨みを持ったまま自刃した薬子の血が几帳に飛び散り、いつまでも乾かなかったという話による。

・天津処女(あまつおとめ)
歴史小説。こちらもとりとめのない話が続く。印象的なのは良岑宗貞のエピソードで、彼の色好みを懲らしめようと、天皇が女装して宗貞を待ち受けたという話がお茶目というか、しょうもないなあ、と苦笑い。

・海賊
『土佐日記』を題材に取った歴史小説。紀貫之の前に海賊が現れ、貫之の和歌の解釈について批判を始める。海賊にしては教養が深すぎる、と違和感を覚えながら読んでいたら、この海賊は文屋秋津であった、というオチがあった。海賊のセリフという形で描かれてはいるが、この貫之批判は、秋成自身の主張なのだろう。

・二世の縁(にせのえにし)
話が滅茶苦茶すぎて、どこから突っ込んだらよいのやら。
庭の下から不審な音がするので掘り返してみると、即身成仏を遂げたミイラのような男が出てくる。この男、一度は成仏した身で記憶を失っているが、蘇生し、俗世にまみれてなぜか結婚するものの、生活力もなく、貧乏暮らしとなり、妻が嘆いている、という話。
おそらく仏教嫌いな秋成。即身成仏なんてありえないと皮肉を込めて、こんな話にしてしまったらしい。

・目ひとつの神
和歌を習おうと東国の男が都を目指したところ、神や化け物たちに遭遇し、都に師となるような人物はいない、独学に励め、と追い返される。奇妙な話だが、これも秋成の思想の現れか。

・死首の咲顔(しにくびのえがお)
壮絶で救いのない悲話。裕福な家庭に育った五蔵と、貧しい家柄の宗はお互い愛し合っているが、貧富の差から、五蔵の父親、五曾次に結婚を反対され、会うことを禁じられる。思い悩んだ宗は病床に臥してしまう。いよいよ危篤という事態に、五蔵は親の反対も省みず、宗と急遽結婚し、せめて宗を自宅で死なせてやろうと自分の家に運ぶ。しかし、父五曾次は宗を厄病者扱いし、追い返そうとする。五蔵の家で死にたいという宗の願いをかなえるため、兄、元助は宗の首を切ってその場で殺害する。
宗を殺したのが恋人(夫)ではなく、兄であるという展開が意外。そして妹を殺したのに元助の罪が軽い点が更に意外だ。
殺人を犯したか否かではなく、親の意に背いたかどうかで罪の重さが決まる点に、当時の倫理観が見てとれる。

・捨石丸(すていしまる)
菊池寛の『恩讐の彼方に』と似ていると思ったら、どうやら同じ題材を用いた作品らしい。
主人殺しの冤罪をかけられた酔っ払い男、捨石丸は逃亡の末、父の敵討ちにきた小伝次と公共事業に取り組み、和解する。父の敵討ちのために修行を積んだのにも関わらず、遂に捨石丸を討たなかった小伝次の有り様に心が温まる。

・宮木が塚(みやぎがつか)
運命に翻弄された美しい遊女の悲話。
宮木は元々中納言の娘という高貴な生まれながら、父親が官職を失った末に死去したのをきっかけに、貧しい身分となり、遊女に身を落とす。しかし、その美しさにほれ込んだ河守が宮木の身請けを約束する。
ところが、河守を妬んだ者の策略により、宮木を身請けする前に河守は死んでしまう。愛する人を失った失意のうちに、宮木は入水自殺する。
実際に秋成が訪れた遊女の墓からインスピレーションを受け、作った作品。いかにも古典的なストーリーである。

・歌のほまれ
唐突に歌論が登場するので、とても違和感がある。万葉集に見られる類歌の多さについて論じている。

・樊噲(はんかい)(上)(下)
親殺しののち強盗を繰り返す、ならず者の樊噲が改心するまでの物語。悪人樊噲がよりによって法師になりすましている点がおかしい。
樊噲は極悪非道な人というわけではなく、時に人を喜ばせたり、仲間を助ける場面もあり、一貫性がない。刹那的に生きている男といえようか。