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パウロ・コエーリョ・著、山川紘矢・山川亜希子・訳「アルケミスト 夢を旅した少年」(角川文庫)
羊飼いの少年は夢を見た。
エジプトのピラミッドのそばに宝物が隠されていると、子どもが彼に伝える夢を。
少年はその夢を信じて、羊を手放し、さまざまな困難に遭いながらも宝物を目指して旅を続ける。



本書は一見気軽に読める児童小説のようだが、含蓄のある言葉にあふれ、大人のための童話、といった印象を受ける。
その点で、「星の王子様」に似ていると感じた。ただし、こちらのほうが直接的でスピリチュアルなメッセージ性に富んでいる。

少年がどうやって宝物にまでたどり着くのかを知るのは、読破した者のみのお楽しみとして、
特に気に入ったくだりを紹介したい。

★自分を縛っているのは自分自身
「世界最大のうそって何ですか?」
「それはこうじゃ、人は人生のある時点で、自分に起こっていることをコントロールできなくなり、
宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」


少年は旅する中で、自分の夢より「人からどう見られるか」を気にして現状に甘んじているパン屋や、変化を拒み、夢を叶えることをあえてせず、一生そこにとどまろうとするクリスタル商人に出会う。
しかし、彼らも本気で変わろうとすれば現状を脱することはできるのだ。
自分を縛って可能性を奪っているのは、実は自分自身なのである。


★だれも自分の運命を教えてはくれない
彼は自分の運命から逃げないために、聞いてはいけないことがあることを学んだのだ。
「自分の意志で決定すると約束したんだ」と少年は自分に言った


少年は謎の老人(セイラムの王様)に、物事の前兆を教えてくれる石、ウリムとトムミムを授かる。しかし、少年が宝物を見つけるかどうかについて、ウリムとトムミムは何も教えてはくれなかった。
運命は誰かが明示してくれるものでなく、自分の意志で決めて、切り開かなくてはならないものなのだ。


★自分の心と向き合う
「なぜ、僕の心に耳を傾けなくてはならないのですか?」
「なぜならば、心を黙らせることはできないからだ。たとえおまえが心の言うことを聞かなかった振りをしても、
それはおまえの中にいつもいて、おまえが人生や世界をどう考えているか、くり返し言い続けるものだ」


砂漠を旅する中で少年は、このまま突き進んでいくことに対する不安、愛する女を置いてきた悲しみなど、様々な感情に襲われる。そんなときはとにかく自分の心に耳を傾けろ、と錬金術師は言う。
自分の心に背くのはつらいことだ。しかし、一方で自分の本心を知るというのは案外難しかったりする。ふだん、自分の心は雑音にまぎれて分からなくなりがちだからだ。
自分の心に耳を傾けるには、どうしたよいだろう。

年とともに挑戦することを忘れ、ぼんやりしている大人は、本作を読むと、どきっとさせられることだろう。


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小川和也「デジタルは人間を奪うのか」(講談社現代新書)
電車に乗れば、乗客は皆ひたすらにスマホをいじっており、読書や人との会話を楽しむ時間はスマホに置き換わってしまった。
スマートウォッチなどのウェアラブルにより、デジタルが限りなく人間の身体に近づき、ますます生活の中に入り込んでいく。
ニュースを見れば、現在存在する多くの仕事がデジタルに代替されるという。
急速なデジタルの発展により、時間、身体、そして仕事までがデジタルに浸食されていくような、言いようもない恐怖を覚えるのは私だけではないだろう。

というわけで、こちらの本を読破。



筆者は本書の中で最新のデジタルの開発状況を紹介しつつ、その危険性を説いていく。
私が特に恐怖を抱いたのは、次のニ点だ。
第一が、脳とデジタルの融合である。BCIという、人間の脳とコンピュータを接続する技術が発達すれば、人間が頭の中で考えるだけで、指一本動かさずにキーボードの操作やメールの作成が可能になるという。そしてもっと恐ろしいのが脳の記憶の複製だ。すでにラットの実験レベルでは、脳の記憶を他のメディアに複製したり、脳内の記憶を削除したりすることに成功しているという。これらの技術は難病や認知症の解決の手立てにはなりそうだが、一方でもはや脳とデジタルの垣根はなくなり、人間の脳までもがサイバーテロや犯罪などの恐怖にさらされることになる。

第二が、冒頭にも書いた、デジタルにより職業が奪われる危険性である。確かに、受付や電話対応、工場のラインなど比較的単純な作業がデジタルに置き換わった世界は想像するに難くない。しかし、本書によると、ロボット記者、ロボット小説家など、一見高度な創造性を強いられるような作業もロボットがこなせるようになるという。
では、職を奪われた人間はどうなるのだろう。人間はより付加価値の高い仕事に就く、というが、果たしてそのような雇用の場が多く存在するのだろうか。そもそも付加価値の高い仕事とは?
さらに、サイバー攻撃、電力の大量消費、ネット依存、仮想と現実の融合、など不安要素を書き連ねたらきりがない。

デジタルの発展により、果たして人間は進化しているといえるのだろうか。
ネット検索に慣れてしまった人間は、自分の足を運んで調べ、自らが情報や知識を蓄えることを怠る。
自動運転車に乗ることが当たり前になった人間は、自分の力で車の運転ができなくなる。
指一本動かさずにデジタルを操れるようになった人間は、指の動かし方すら忘れてしまうかもしれない。
これらは、むしろ退化といえるのでないだろうか。

便利さにあぐらをかき、考えることを放棄してしまったら、我々人間がロボットに支配される日がやってくる―。
これはもう、SF映画の世界だけの話ではないのだ。