妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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いとうせいこう「想像ラジオ」(河出文庫)
あの震災から4年半。想像してみる。失われたもののことを。



死者と生きる者を想像でつなぐ物語。
はじめは状況設定がなかなか呑み込めず、さらにラジオのDJアークのおしゃべりが冗長なのにやや辟易したが(まあ、ラジオトークとはそういうものなのだろうが)、1章の後半からは一気に読んでしまった。

DJアークには申し訳ないが、私はどちらかというとラジオの章よりも途中に挿入されている2章と4章のほうが印象強かった。

2章は被災地にてボランティア活動を行う、生きる者たちの章である。
彼らは被災者のことをどう考えるかについて議論を交わしている。災害で亡くなった人の苦しみ、あるいは大切な人を失った人の悲しみは、その当事者にしか絶対に理解できないのだから、無関係な者が入り込んではいけない、というのが一つの意見。
「他人の不幸を妄想の刺激剤にして、その妄想にふけって鎮魂した気分になるのは単なる自己満足」という厳しい意見の一方で、亡くなった人のことを想像するのは必要だ、という意見もある。想像することで事実を風化させないことも大切だし、他者の苦しみを想像できないのは薄っぺらな生き方だ、というものである。
私個人の考えは前者に近いが、とても難しい問題だと思う。他人の苦しみを分かった気になるのは欺瞞であり偽善だと思う一方で、理解できないからといって考えることを放棄するのも間違っていると思う。

4章は作家Sが描く、死者である愛する女性と自分との対話をまとめたものである。
死者の世界は生者がいないと成立しない、生き残った人の思い出も、死者がいないと成立しない、という言葉が印象的。
生きる者が想像することで、死者の世界は存在し続ける。死者がいるから生きる者が支えられているという考え方には共感できる。人間が存在し続ける限り、この二つの世界も存在し続けるのだろう。

そして気になるのが、この2章・4章とDJアークの章の関係である。一読した直感では、4章はDJアークの書いた小説で、それが現実世界の2章と絡んでおり、生死の世界を結んでいるのかな、と思ったが、解説者の解釈は私のそれと反対だった。これも、想像の世界。

余談だが、ラジオ内でたくさんの曲が紹介されているので、どんな曲なのかとても気になった。
今はこれを書きながら、モーツアルトの「レクイエム」を聴いている。



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安福望「食器と食パンとペン わたしの好きな短歌」(キノブックス)
イラストレーターの安福さんが1日1首、好きな短歌を選んで絵をつける人気ブログ、「食器と食パンとペン」。
その厳選作品を書籍にまとめたものがこちら。



やわらかいイラストと、若手歌人の作品を中心とした、瑞々しく共感できる短歌の数々が特徴的。
短歌集というというとかたいイメージをもたれそうだが、とてもなじみやすく、やさしい本になっている。

気になった短歌を3点ほど、ご紹介。

近づけば光らない石だとしても星 それぞれに夢を見ている(田中ましろ)

とても悲しい歌にも読めるし、ささやかな希望がある歌にも読める。
悲しい解釈⇒誰もが光る宝石の原石、なんていうのはきれいごとで、実際に夢をかなえることができるのは、ほんの一握りの人間のみ。かなわない夢は光ることなく、人々の心の中で眠り続ける。
希望をもった解釈⇒人ひとりひとりは特別な光を持った存在でないかもしれないけれども、みんな心に小さな夢を持って生きている。
イラストはコップの中の星屑に埋もれて眠るサイの絵だろうか。やわらかい絵だから、きっと希望を持った歌なのだ。

たくさんのたくさんの人がいる中でただ手を繋げる人を探した(後藤葉菜)

群衆の中の孤独。1人でいるときよりも大勢の人に囲まれているほうが孤独を感じる不思議。
自分の横をひたすら通り過ぎる無関係な人たちの中から、大切な人を探し出す、その賢明な気持ち。この歌もなんだかちょっと悲しい。

☆さよならをちゃんと言わなきゃ永遠に春にならないような気がする(山本左足)

イラストはお花畑の中にいるのに、こたつから抜け出せない少し物憂げな女の子。
過去に足を取られて、しがらみから抜け出せない。
別れを告げるのはつらいけれど、前に進むためには痛みを伴わなければならない時もある。

はっ、なんだか悲しい歌ばかり選んでしまったようだ。