妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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第23回東京国際ブックフェア
昨日から明日まで3日間にわたって行われている、東京国際ブックフェアに行ってきた。

book

今年は例年と開催時期や主旨を変更し、一般読者をターゲットにすると聞いていた。
確かに休日だったこともあり、来場者は8割がた「読者」のカードを首から下げていた。
しかし、入場してまず受けたのは、「あれ?会場狭くなった?展示数もかなり減った?」というマイナスの印象。
単なる本の展示に終わっているブースも多く、わざわざビックサイトまで足を運ぶメリットが感じられないように思えた。

トークショーも数多く開催しているので、作家などのトークを聴きたい人にとっては意味のあるイベントだったかもしれない。
また、子ども向けのコーナーも多く設けていたので、子連れのお客さんは楽しめるのかもしれない。
しかし、それ以外の人にとっては、ちょっとがっかりするブックフェアだったのではなかろうか。
出版業界の衰退を感じさせられたような・・・。
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神田茜「ぼくの守る星」(集英社文庫)
ディスレクシア、という言葉を聞いたことがあるだろうか。
難読症、つまり文字の読み書きを極端に苦手とする学習障がいのことである。
そんなディスレクシアの少年が主人公の小説があると知って、さっそく読んでみた。



しかし、ディスレクシアのことだけを知りたいと思って読んだ人にとっては少し予想はずれの小説かもしれない。
本書は、ディスレクシアの少年、翔を主人公を中心に、誰かに認められたいと必死にもがく人々を描いた、連作短編小説となっているからだ。
言い間違いや読み違いが多く、うけをねらっているわけではないのに、クラスメイト達に笑われることに苦しむ翔。高校受験を目前に翔は将来の不安や母親との関係性にも向き合わざるをえない状況となっていく。
そんな翔の母親、和代は翔の障がいを未だに直視できておらず、さらには母親との確執、不在にしがちな夫、「勝ち組」だった自分の過去を抱えながら、虚勢を張って生きている。
翔の父親は仕事一筋で生きていくうちに家庭での居場所を失ったうえ、仕事でも挫折感を覚え、人生につまずきを感じている。
翔のことをちゃかしてばかりの山上は、亡き姉のことばかりにとらわれている両親のもとで、自分の存在価値を見いだせないでいる。
翔のクラスメイトで引っ込み思案のまほりは、無理心中未遂をはかった母親とともに暮らしながら、自殺の計画を立てている。

翔のまわりにいる人たちの状況がそれぞれシリアスなので、あまりに設定が暗すぎやしないか?とも思ったが、そんな自分の居場所を求めている人たちが、主人公翔のやさしさによって救われていくさまが温かい。そして、そんな人々を守ることによって翔自身もまた、自分の存在意義を見出していくことになる。
月並みだが、障がいの有無とは関係なく、人は支えあっていきているということに気づかせてくれる作品である。
上橋菜穂子「隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民」(ちくま文庫)
『獣の奏者』『鹿の王』などで知られるファンタジー作家の上橋菜穂子氏は、文化人類学者でもある。
本書は、上橋氏が文化人類学者として、オーストラリアの先住民、アボリジニを研究した結果をまとめた作品である。



日本人が抱くアボリジニのイメージといえば、都会からかけ離れた大自然の中で原始的な暮らしをする人々、といったところだろうか。
本書を読めば、そのステレオタイプがいかに古く、誤ったものであるのかがわかる。
彼らは今や、白人と一緒に町の中で暮らしている。多くのアボリジニが伝統文化を失い、独自の言語を失い、白人との混血が進む中でも、やはり白人とはどこか異なる価値観を抱いて生きている。誰がアボリジニで誰が白人なのか、次第に曖昧になっていく中で、アボリジニは決して遠い存在ではない、「隣人」となっているのだ。

アボリジニが歩んできた歴史はとて悲惨なものである。
かつていくつものも言語と文化を抱えた伝統集団であったアボリジニは白人に武力によって制圧され、劣悪な労働環境のもと、牧童とされた。その後、アボリジニの虐殺、虐待の歴史を経て、政府はアボリジニの保護政策に乗り出す。しかし、それはアボリジニを隔離し、親から子どもを取り上げて公共施設へ収容するというあまりにむごい政策であり、ここで彼らの文化は継承されずに滅んでいくこととなる。差別をなくすべく60年代に導入された白人とアボリジニの平等賃金制度は、大量のアボリジニを失業させ、アル中や犯罪者にしてしまうという結果を招き、現在に至っている。

それでもアボリジニの文化は完全に失われたのではない。親族を大切にする文化、アボリジニ独自の儀礼や「法」は現在も生き続けている。傍観者としては、アボリジニにはその現存する貴重な文化を失わずに生きていてほしいと身勝手なことを思ってしまうが、彼らの文化は決して良いものばかりではない。「法」を犯したアボリジニを殺す恐ろしい呪術師「ジナガビ」、女性蔑視の結婚制度など、そこには負の部分もあり、また白人中心の社会では生きづらさを生んでしまう要素となってしまう点も多いのだ。

人種隔離政策のような明らかな差別がなくなった一方で、これまでの社会的背景により、失業者やアル中のアボリジニが大量に発生している現状はベストだとはとてもいえない。しかし、白人とアボリジニが共存している以上、その衝突を避けることもとても難しい。両者がよりよく生きるためにはどうしたらよいのか。それは非常に複雑で難しい問題である。

本書全体から、アボリジニと真摯に向き合う上橋氏の姿が感じられ、その誠実なお人柄に好印象を受けた。