妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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読売新聞教育部「大学入試改革-海外と日本の現場から」(中央公論新社)
2020年から日本の大学入試が変わると話題になっているが、では海外の入試はどのように行われているのだろう?と思って手に取った本がこちら。



本書ではアメリカ、台湾、韓国を中心とした各国の入試状況と日本の入試改革に関する取材がまとめられている。その概要を下記にまとめる。

★アメリカの場合
複数回実施の共通テストSATに加え、高校時代の活動実績や小論文、面接などで総合的に合否が決まるアメリカの大学入試。SATは日本の大学入試改革の参考とされる存在ではないかと思うが、そのSATも近年は出題内容が高校での授業内容とかけ離れ、塾に通って対策をとれる子が有利になるという批判にさらされ、見直しが行われた。変更後は教科横断型の論述や統計データの読み取りなど、まさに日本の新試験でも話題にあがっていた問題形式となっている。
注目すべきは日本のように1点刻みで合否が決まるのではなく、ボランティア活動などの課外活動が重視され、大学によって差はあるものの、「いかに大学に貢献できる人物か」「大学の環境、校風にマッチしているか」を見ており、多様な人材を確保することに重点を置いているという点である。入試というよりは就職活動の採用面接のようで、特に“生徒が学校に貢献する”という意識は日本人にないため、その採点基準には違和感を覚える。テストが満点でも面接で落ちる可能性があり、評価基準もあいまいで、不公平感があり、日本では受け入れにくいだろうなと感じた。

★台湾の場合
台湾では共通テストを年2回行っている。1回目は三年生の中盤に行われる「学科能力測験」。2回目は卒業後に行われる「指定科目考試」。前者のほうが圧倒的に受験者が多く、後者は「敗者復活戦」として捉えられている。前者は学力試験に偏った評価にならないよう、面接や課外活動の実績と総合して判断するAO入試型。かつての受験戦争の激化への社会的批判により、推し進められた形だ。しかし、やはり評価基準の曖昧なAO入試は不公平だという不満や、「学科能力測験」の後は合格した生徒が遊んでしまい、授業が成立しなくなるという問題も生じている。特筆すべきは、台湾大などが地域格差を解消するため、各学校につき1~2人を推薦できるという繁星推薦を設け、地方の生徒を集めようとしている点だ。しかし、学校によってレベルがバラバラなので、都会の生徒に対する逆差別になりそうで、やはり不公平感があると感じた。

★韓国の場合
日本以上に学歴社会で知られる韓国。過度な受験競争を緩和しようとAO型の入試が広がっており、進学校では詰込み型の学習よりも発表などのアウトプットや面接対策に力を入れている。塾通いを減らし、受験競争を緩和させようというその取り組みは、大学の個別試験での教科の筆記試験を法律で禁止し、TOEICなどの外部試験の資格を調査書に記載することも禁じるなどの徹底ぶりだ。しかしどんな方式にしてもその対策をする塾ができ、いたちごっこの状態が続いている。大統領が変わるたびに入試制度が変わってしまうという状況もあり、模索状態が続いているといえるだろう。

どの国の入試制度にも一長一短あり、完璧な入試というのはそうそうないということを感じさせられた。
気になったのは、本書に載っているのがハーバード大をはじめとする超一流大学の事例のみで、一般的な大学の例ではないということだ。本書の最後の方で定員割れしている日本の大学の事例が紹介されていたが、他国の取材でもトップ校だけでなく大多数の大学の現状を知りたいところである。

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飛鳥井千砂「砂に泳ぐ」(KADOKAWA)
アラサー女子をリアルに描く飛鳥井千砂さんの小説が好きで、『アシンメトリー』『学校のせんせい』『サムシングブルー』に続き、本書で4冊目の読了。



地方の携帯ショップ店員として働いていた紗耶加は、仕事のストレスやかみ合わない彼氏とのやりとり、そして自分の生きる狭い世界に息苦しさを覚え、上京する。
携帯会社のコールセンターで働き始めるものの、慣れない都会暮らしからストレスによる急性のめまいに襲われる。そんな紗耶加は自分を助けてくれた優しい男性、圭介と付き合い始めるが、彼の精神的不安定さや違和感を覚える言動に、次第に悩まされ、振り回されていく。圭介と別れ、もがきながらも、やがて紗耶加はフォトグラファーになるという自分の夢を切り開いていく。

本の帯を見ると、この小説は一人の女性が次第に強さを身につけていく成長物語であるかのように説明されているが、私の印象では、紗耶加は初めから芯の強い女性である。次々と店員が離職していく携帯ショップにおいて、同僚の嫌みやモンスター顧客にも屈せず働き続け、たった一人で身寄りのない東京へ向かい、ストレス性の病に襲われても決して故郷に泣きかえることなく、自分の居場所を見出していく。その姿はとてもたくましい。
一方で恋愛に対しては潔い反面、一種の冷たさのようなものを感じた。はじめの彼氏、智彦とは会話がかみ合わず、違和感を覚えるという理由で別れ、二人めの彼氏、圭介は精神的に弱く、紗耶加にすがりついてくるがそれも切り捨ててしまう。強いといえばそうなのかもしれないが、特に圭介の切り捨て方は、読んでいて彼がちょっとかわいそうな気もした。

さて、冒頭で書いたとおり、飛鳥井千砂さんの作品はリアリティがあって好きなのだが、飛鳥井さんは特に「人間関係が壊れていくさま」を描くのが上手だなあ、と思う。女の友情にひびが入るシーンや、今回の作品でいうと、彼氏とすれ違っていく会話などの描き方が卓越だと思うのだ。ただ、リアリティという部分から言うと、今回の作品は少し話がうまく運びすぎているかもしれない。後半の圭介と別れた後の紗耶加の葛藤などが描かれていると、より良かったと思う。