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サン=テグジュペリ・著、河野万里子・訳「星の王子さま」(新潮文庫)
子どもの頃に読んだ時にはその価値が理解できなかったのに、大人になって読み返してみると全く違う意味と価値を感じさせてくれる本がある。この本がまさにそうだ。

星の王子さま (新潮文庫)星の王子さま (新潮文庫)
(2006/03)
サン=テグジュペリ

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詩情豊かで、珠玉の言葉がちりばめられている本書は、さながら名言集のようでもある。
あまりに有名だが、その一例をあげると次のようなものだ。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「人は、自分のいるところにけっして満足できない」
「星々がうつくしいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているからだね…」

サン=テグジュペリは、作品を通してユーモアと皮肉たっぷりに大人を批判する。
物事を固定観念でしか捉えようとせず、本質を見る目を失ってしまった大人。
無意味な金儲けに目がくらみ、本当に大切なものを犠牲にしている大人。
自分の足で歩き、目で見て確認することを忘れてしまった、頭でっかちの大人…。
冒頭の「ぼく」の絵を理解してくれない大人達のエピソードや、王子さまが行く星々で出会う滑稽な人々の姿は、そういった大人の象徴である。
「大人=悪、子ども=善」という見方自体、ある種の固定観念なのではと感じなくもないが、大人なら誰しも身につまされる話の一つや二つはあるだろう。

しかし、この作品の主題は、恋愛哲学なのではないだろうか。
王子さまとバラのエピソード、そしてキツネとのやりとりを通じて、筆者の考える恋愛の本質が描かれている気がしてならない。

自分にとって唯一の存在だと思っていた相手が、実は他のものたちとなんら変わらないありふれたものだと気づいたときのショック。
そのありふれたものの一つを自分にとって特別な存在にするためには、我慢強く時間をかけて絆をつくること。
誰かに「なつく」と、それに付随するさまざまなものまで美しく思えて、日々が楽しくなること。
別れはつらいけれど、たとえ誰かを失っても、どこかにいると信じることで、毎日はきらきらと輝き続けること。

平易な言葉でつづられてはいるが深く心に響くメッセージである。

お話のエンディングはとても悲しい幸福に包まれている。そして、ふだんのあくせくした日常では感じられないような、静かな感動に浸ることができるのだ。
まさに、大人のための童話、である。
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