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上田秋成・著、井上泰至・訳注「春雨物語」(角川ソフィア文庫)
久しぶりにじっくり古典が読みたくなって、手に取ったのがこちら。


秋成というと『雨月物語』が有名だが、次に有名なのがこの『春雨物語』だろう。
十作品を収めた短編集だが、歴史物語、怪異小説、歌論と作品がバラエティに富んでいるので、現代人が読んでも飽きずに楽しめる。ただ、純粋な物語というよりは、作品や登場人物を通じて秋成が自分の主義主張を行おうとしているケースが多いように感じられる。
各作品の概要は下記のとおり。

・血かたびら
平城天皇と薬子の変を中心に描いた歴史小説。話の展開にとりとめがなく、またこの平城天皇が何とも頼りない。表題は罪を問われて捕らえられ、恨みを持ったまま自刃した薬子の血が几帳に飛び散り、いつまでも乾かなかったという話による。

・天津処女(あまつおとめ)
歴史小説。こちらもとりとめのない話が続く。印象的なのは良岑宗貞のエピソードで、彼の色好みを懲らしめようと、天皇が女装して宗貞を待ち受けたという話がお茶目というか、しょうもないなあ、と苦笑い。

・海賊
『土佐日記』を題材に取った歴史小説。紀貫之の前に海賊が現れ、貫之の和歌の解釈について批判を始める。海賊にしては教養が深すぎる、と違和感を覚えながら読んでいたら、この海賊は文屋秋津であった、というオチがあった。海賊のセリフという形で描かれてはいるが、この貫之批判は、秋成自身の主張なのだろう。

・二世の縁(にせのえにし)
話が滅茶苦茶すぎて、どこから突っ込んだらよいのやら。
庭の下から不審な音がするので掘り返してみると、即身成仏を遂げたミイラのような男が出てくる。この男、一度は成仏した身で記憶を失っているが、蘇生し、俗世にまみれてなぜか結婚するものの、生活力もなく、貧乏暮らしとなり、妻が嘆いている、という話。
おそらく仏教嫌いな秋成。即身成仏なんてありえないと皮肉を込めて、こんな話にしてしまったらしい。

・目ひとつの神
和歌を習おうと東国の男が都を目指したところ、神や化け物たちに遭遇し、都に師となるような人物はいない、独学に励め、と追い返される。奇妙な話だが、これも秋成の思想の現れか。

・死首の咲顔(しにくびのえがお)
壮絶で救いのない悲話。裕福な家庭に育った五蔵と、貧しい家柄の宗はお互い愛し合っているが、貧富の差から、五蔵の父親、五曾次に結婚を反対され、会うことを禁じられる。思い悩んだ宗は病床に臥してしまう。いよいよ危篤という事態に、五蔵は親の反対も省みず、宗と急遽結婚し、せめて宗を自宅で死なせてやろうと自分の家に運ぶ。しかし、父五曾次は宗を厄病者扱いし、追い返そうとする。五蔵の家で死にたいという宗の願いをかなえるため、兄、元助は宗の首を切ってその場で殺害する。
宗を殺したのが恋人(夫)ではなく、兄であるという展開が意外。そして妹を殺したのに元助の罪が軽い点が更に意外だ。
殺人を犯したか否かではなく、親の意に背いたかどうかで罪の重さが決まる点に、当時の倫理観が見てとれる。

・捨石丸(すていしまる)
菊池寛の『恩讐の彼方に』と似ていると思ったら、どうやら同じ題材を用いた作品らしい。
主人殺しの冤罪をかけられた酔っ払い男、捨石丸は逃亡の末、父の敵討ちにきた小伝次と公共事業に取り組み、和解する。父の敵討ちのために修行を積んだのにも関わらず、遂に捨石丸を討たなかった小伝次の有り様に心が温まる。

・宮木が塚(みやぎがつか)
運命に翻弄された美しい遊女の悲話。
宮木は元々中納言の娘という高貴な生まれながら、父親が官職を失った末に死去したのをきっかけに、貧しい身分となり、遊女に身を落とす。しかし、その美しさにほれ込んだ河守が宮木の身請けを約束する。
ところが、河守を妬んだ者の策略により、宮木を身請けする前に河守は死んでしまう。愛する人を失った失意のうちに、宮木は入水自殺する。
実際に秋成が訪れた遊女の墓からインスピレーションを受け、作った作品。いかにも古典的なストーリーである。

・歌のほまれ
唐突に歌論が登場するので、とても違和感がある。万葉集に見られる類歌の多さについて論じている。

・樊噲(はんかい)(上)(下)
親殺しののち強盗を繰り返す、ならず者の樊噲が改心するまでの物語。悪人樊噲がよりによって法師になりすましている点がおかしい。
樊噲は極悪非道な人というわけではなく、時に人を喜ばせたり、仲間を助ける場面もあり、一貫性がない。刹那的に生きている男といえようか。
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