妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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角田光代「おまえじゃなきゃだめなんだ」(文春文庫)


恋愛や結婚を中心とした24編のショートショートを収めた短編集。
不規則な構成の章立てが独特で魅力を感じたので、章立てを中心とした感想を。

―ほんもの、が欲しい―
とあるジュエリー店(明らかにティファニー)を訪れる人々を描いた「約束のジュエリー」、かつて高校の修学旅行で同じグループだった40代女性のそれぞれの人生を描く「あの宿へ」、死期の迫った人の「花」が見えるという特殊な能力を持った女性を描く「さいごに咲く花」、結婚間近な女性の、最初と最後の彼氏とバーの思い出を描いた「最後のキス」「幼い恋」、そして表題にもなっている「おまえじゃなきゃだめなんだ」の冒頭につけられたタイトルが「ほんもの、が欲しい」。

「ほんもの」ってなんだろう。

「ほんものを作ろう」と決意するのは「あの宿へ」に登場する美南。彼女は映画監督として四苦八苦する中で、ほんものとは「色あせることなく、消えることなく、ずっと心にとどまるもの」だと気づく。それは、無理に背伸びして手に入れるものや、見せかけだけのきらびやかさではなく、もっと素朴で身近にある、人生に小さな喜びを与えてくれるものなのだ。

「ほんもの」は値段や物でははかれない、と教えてくれるのは、「約束のジュエリー」と「おまえじゃなきゃだめなんだ」。
後者の主人公、「わたし」は男性が連れて行ってくれるレストランの高級さやプレゼントの値段にしか価値を見いだせない女性。しかし、安っぽいチェーンのうどん屋に何よりも大切な家族の思い出を持っている男性と出会い、人にとって何にも代えがたい大切なものというのは金額や高級さとは無関係なんだと気づく。
それと相反するように、「約束のジュエリー」ではジュエリーを通じて、送り主の「ほんもの」の愛の強さや確かさを実感する人々が登場する。しかしそれもティファニーそのものに「ほんもの」があるのではなく、ジュエリーに込められ、可視化された愛があるからこそ、ティファニーはティファニー以上の価値を持つのである。

―好き、の先にあるもの―
旅行先で出会った人々との思い出が交錯する「ぞれぞれのウィーン」、大学時代のサークルの先輩と久しぶりに再会したものの、記憶の中の先輩の印象とのギャップに戸惑う「すれ違う人」、居住地を中心とした場所にまつわる人々の思い出を描いた「不完全なわたしたち」、そして今まさに結婚しようとしているカップルと離婚しようとしている夫婦を交互に描いた「消えない光」の冒頭につけられたタイトルが「好き、の先にあるもの」。

好き、という思いの先にあるのは、数々の思い出、結婚、そして離婚。
思い出は時に美化し、時に他の記憶と混合する曖昧なものである。「ぞれぞれのウィーン」、「すれ違う人」を通じて、人の記憶力の不確かさを感じ、ちょっぴり切なくなる。
そしてそれ以上に悲しいのが「消えない光」。厳しい両親に、フリーターの彼との結婚を認めてもらえない悔しさと悲しさを抱える凜子と、そんな凜子のためにアルバイトでためたなけなしの金をはたいて婚約指輪を買おうとする耕平。お互い思いやりがあり、好き合っているのに周囲に認められない二人の不器用さが悲しい。
一方、芳恵と武史はきちんとした生活を保ち、お互い心穏やかに接していられるのに、離婚を決意する。なぜこの二人は別れなければいけないのだろう。納得がいかないまま、切なさだけが読後に残る。
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