妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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サン=テグジュペリ・著、二木麻里・訳「夜間飛行」(光文社古典新訳文庫)
何のために飛ぶのか。



薄暗く、重い印象を持たせる小説である。
命を懸けて夜間郵便飛行を行う男たち。一機の飛行機の墜落事故を通じて、その人間模様を描く。

新婚でありながら地上の幸せに別れを告げ、死への飛行を続ける悲劇のヒーロー、パイロットのファビアン。
自分の命の行方をパイロットのファビアンにゆだねるしかない、同乗者の通信士。
ひたすらパイロットの無事を祈って待つ、哀れな若き妻。
たった一度の小さなミスで解雇されそうになるベテラン工員のロブレ。
冷徹に人々を罰することで何とか自分の威厳を保とうとするものの、自らの無力さを知っている監督官ロビノー。

しかし、この小説の中でひときわ存在感を放つのはパイロットではなく、地上で全線路に責任を負う、社長のリヴィエールである。彼はひたすらパイロットたちの運命を抱えて生きるという宿命に苦悩しながらも、事故を最小限に抑え、事業を成功させるために、非人間的な指示をも出し続ける。夜間飛行では少しの気のゆるみが命取りになる。小さな恐怖心がパイロットをだめにする。そこで彼が出す指示は機械的で冷たいものになるのだ。
最後のシーンで彼は墜落事故があったのちも後発の便の出発を見送らず、事故死したパイロットがいる空に再びパイロット達を送り出す。自分の意志を貫くために。彼は自分の心の弱さに勝利したのだ、それが正しい判断なのかはわからないけれども。

今を生きる人間を犠牲にしてまでやり遂げなければならない事業とは何なのか。
彼らが飛び続けることの尊さはどこにあるのか。
本書は読者に深い問題を投げかける。

最も美しいのは、ファビアン達が死にゆくシーン。
彼は暴風雨の中で嵐の裂け目を見つけ、上空を目指す。そこにあるのは、満天の星、そして満月。しかし、ファビアン達は二度と生きて下界に戻ることはできない。まるで天国へと昇華していくような、絶望的な悲しい美しさである。
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