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三島由紀夫「金閣寺」(新潮文庫)


子どもの頃から金閣寺に特別な思いを抱いていた一人の僧侶が、金閣寺放火事件を犯すまでの物語。
この主人公は吃音がきっかけとなって他者と自分との間に隔たりを覚えながら育ち、他人に理解されないことが唯一の誇りだと思っている。
その思考回路は私のような単純平凡な人間には理解しがたい複雑さで、文章を繰り返し読んでみるものの、やっぱり芯からは理解できない。

さて、この主人公はいかにも孤独なようだが、二人の対照的な友がいる。
その一人、鶴川の存在を一文字であらわすならば、「明」である。彼は、たとえば“主人公が金閣寺に特別な思いを抱くのは亡くなった父のことを思い出すからなのか”、など、物事をとても平凡で明るく「誤解」している。
主人公をなじり、恋人と心中した有為子、浅はかな母、やましい事情を抱える老師など暗い登場人物ばかりの中、鶴川の存在は作品に一筋の光を投げかける。しかし、その反動として後半で明らかになる鶴川の死の事実は、主人公と読者に重くのしかかる。
鶴川が「明」ならば、もう一人の友人、柏木は「暗」である。内飜足の柏木は主人公をもってして「生きることと破壊することが同じ意味を持って」いると感じさせ、欺瞞に満ち、すがすがしいほどに醜い存在のように感じられる。誰のことも信じていないような柏木は最終的には主人公のこともあらゆる方向から追い詰めていく。その思考回路は主人公を上回るねじくれようで、とても理解しがたい。

ところで、主人公はなぜ金閣寺に火をつけたのか。
彼にとって金閣寺は自分の美、人生を邪魔する存在である。
女を抱こうとすると金閣寺が現れる、というのはいかにもシュールだが、主人公は次第に金閣寺の幻想に追い詰められていく。
そして、金閣寺は永遠の、絶対的な美でありながら、すべての無力の根源だと判断し、金閣が焼けたら世界は変貌するのだと信じ込むようになる。
このあたりの思考回路もなんとも理解しがたいが、金閣寺に思考が支配され、その崩壊を望む過程が事細かに綴られている。

このように本作はひたすら陰鬱な印象を受けるが、最後に主人公は「生きよう」と決意する。
彼が自殺ではなく生を選んだのは、金閣寺から「死」を拒まれたからだろうか。
彼から「生」を隔てた金閣寺が最後には「死」も隔てる、というのは皮肉なものだが、そこにあるのは小さな明るさなのかもしれない。

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