妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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遠藤周作「おバカさん」(小学館)
世界一格好悪い、スーパーヒーローがここにいる。



絶版となった昭和文学の復刻版シリーズとして、ペーパーバックで読んだ。
遠藤周作というと「海と毒薬」「沈黙」といった「おかたい」作品しか知らない私にとってはいささか衝撃的な作品である。

物語の舞台は、東京。いかにも頼りないへっぽこな兄の隆盛と昭和のバリキャリ娘である妹、巴恵という漫画のような兄弟のもとに、自称ナポレオンの子孫である、フランス人のガストンがやってくるところから始まる。外国人自体が珍しかった当時、いったいどんなに立派な青年が現れるのだろうとそわそわする二人だったが、現れたのは馬面で間が抜けた、なんとも貧乏くさい男だった―。

このガストン、折角日本に来たのに、華やかな観光地にはいっさい訪れない。それどころかガストンが渡り歩いて目にするのは、日本社会の闇の部分ばかりである。新宿に行けばヤクザに絡まれ、宿を探し求めて迷い込んだのは渋谷のラブホテル。挙句の果てには殺し屋に連れ去られる始末で、踏んだり蹴ったりなのである。

そう、この作品、読者の笑いを誘う部分も多いが、扱っているテーマは案外重い。本書の端々に描かれているのは、愚連隊、日雇労働者、売春婦、戦犯、犬の殺処分、人種差別、そして暴力、人を憎む心などだ。
そんな日本の闇の中で、人を疑うことを知らず、すべての人に対して愚直に向き合っていくガストンは、バカというより、純粋そのもの、ピュアなのだ。
彼の片言の日本語が幼児性を強め、さらにピュアな印象を読者にもたらす。
そして、読んでいくうちに彼は日本を救いにきた、弱くて格好悪い、スーパーマンなのではないか?というような気がしてくる。
スーパーマンだから彼は来日した目的も行く先も告げず、流れ星のようにみんなの前から消えたのだ、と。

随所でくすっと笑いつつ、なんだかちょっと切なくなるのは、大人が失った信じる気持ちや素直な心をもったガストンが、実際には存在しえないファンタジーの中のヒーローだと思ってしまうからなのだろう。


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