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山本敏晴「世界で一番いのちの短い国 シエラレオネの国境なき医師団」(小学館文庫)
「世界一の短命国ってどんな国だろう?」そんな軽い好奇心から手に取った本だが、想像をはるかに超える実態に衝撃を受けた。



ここに書かれているシエラレオネの実態は、日本では考えられないことばかりだ。
不衛生で、杜撰で、健康についての知識や常識が通用せず、むごくて悲惨な歴史を持った国。
読んだだけで病気になりそうな気がして、読み進めるのがしんどい部分もしばしばあった。少なくともカフェでゆったりお茶をしながら楽しめるタイプの本ではない。
しかし、本書は私のような国際協力に無知な人間に考えるきっかけを与える、非常に大きな意味のある本だと思う。はじめは不謹慎にも思えた明るく軽妙な筆者の語り口に励まされ、結局短期間で読み切った。

ここに書かれているシエラレオネの実態例をかいつまんでご紹介したい。(本書が描かれた2002年当時。現在は改善されていることを期待したい)

★不衛生
トイレに行ったら無数の虫。そしてその虫は様々な病原菌を媒介する。おしりは手でふき、水がないときはそのまま。日本の5倍ほどのサイズのゴキブリがうようよいる。川や土の中には日本には存在しない、人を死に至らしめる恐ろしい寄生虫が多数いる。国民の1/3はHIVに感染しているといわれているが、採血の針は使い回し。お店で売られている食品は腐っている。

★医療体制の崩壊
内戦でインフラとともに病院は破壊され、医療関係者の多くは国外に逃亡し、国内にいるごく一部の医者は超特権階級としてふんぞり返っており、医者の仕事をほとんどしない。薬は不法に転売され、不適切に使用されているので病原体は耐性化し、薬も効かなくなっている。

★今も色濃く残る、むごく暗い歴史
長く戦争が続いたこの国では、国力を疲弊させることを目的とした一般市民の四肢切断や、子どもを麻薬漬けにして子ども兵とするなど、想像を絶するむごいことが行われていた。更に歴史を紐解けば、植民地時代、奴隷の歴史にさかのぼり、あまりに読むのがしんどく、人間としての尊厳とはなんだろう、と思ってしまう。

★常に危険と隣り合わせの国際協力
強盗、強姦、殺人が多発するこの国では、医師団の人たちは常に危険と隣り合わせ。身を守るために24時間通信用ラジオを持ち、車で行動する。郵便物は100%盗まれ、何も届かない。

さて、私にとってあまりに強烈だったので、シエラレオネの実態ばかり書いてしまったが、この本の重要な部分は「あるべき国際協力の姿とは何か?」を問いかけている点だろう。
「正しい医療を伝えるんだ」と固執すれば、ただの西洋文化の押し付けになり、一時的に物資や金銭を「支援して」も根本的な解決にはならない。なによりも難しいのが彼らの伝統文化と西洋医療との関係性であると感じた。たとえば、シエラレオネの通過儀礼として定着している割礼。先進国の医療関係者からすれば自ら病気にかかろうとしているようなとんでもない慣習だが、「医学的に危険だからやめろ」と強制するのは文化の破壊、価値観の押し付けになってしまう。
国際協力をする人たちの中にも考え方の差があるだろうが、「選択肢を示し、判断は現地の人に任せる」という筆者の考え方には非常に好感が持てた。

また、大切なのはこの悲惨な状況の背景を考えること。何がこの国をこういう事態にしてしまったのか、その点をもっと学びたいと思った。

国際協力に参加する人は強い意志と行動力をもった人ばかりだと思っていたら、意外にも軽い気持ちで参加し、途中でトラブルを起こして帰国してしまう人も多いようだ。それもどうかとも思うが、何もしない私よりは行動に起こした者の方が意味がある様な気もする。
そしてそんな行動力も勇気もない人間に遠いアフリカの一国の実態を伝える、貴重な本を読めてよかったと思う。途中しんどかったけれども。
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