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岩城けい「さようなら、オレンジ」(ちくま文庫)
短い小説だが、難民問題、人間にとって母語とはそして祖国とは何か、女が妻として母として生きるということはどういうことか…などについて深く考えさせられ、最後は勇気づけられる素晴らしい小説である。



主人公のサリマは国の混乱を逃れるためオーストラリアに避難してきたアフリカ難民。戦争のせいできちんとした教育を受けていないサリマは母語の読み書きもままならないにも関わらず、学校で英語を学び始める。
物語のもう一人の主人公は、語学研究者の夫に連れ立って渡豪した日本人女性、「ハリネズミ」である。日本の大学を出、物書きを目指している彼女もまた、学校で英語を学ぶ生徒であった。
サリマとハリネズミは異なる境遇でありながら、英語を母語としない外国人同士として知り合い、次第に仲を深めていく。

母語を使えず、人種も異なるということは二人にとって大きなハンデとなる。異国民であるというだけで就職活動がうまくいかない。頼りになる親せきも友人もいない。そんな中で「言葉」は生きる術となっていく。

この小説はそんな言語と難民問題を描いた作品として注目を浴びているようだが、私はそれ以上に女としての生き方について問う作品であると感じた。作者は女。出てくる登場人物も女ばかり。そんな女による女のための小説ともいえるだろう。

サリマをバカ呼ばわりし、仕事と家族を捨てて出て行った夫。サリマはその夫が投げ出した精肉作業場の仕事を継いで、辛抱強く働く。二人の息子を育てるために。しかしその息子も成長するにつれ、夫と同様にサリマを蔑み、やがてサリマより父親のほうを選ぼうとする。この展開には強い憤りを感じ、そしてとても悲しい気持ちなった。夫には耐えられなかった仕事を、文句ひとつ言わずに淡々とこなす、健気なサリマ。そんな彼女を見下す男どもとはいったい何なのだろう!

もう一人の主人公、ハリネズミは学ぶことに大きな意欲(執着)を持ちながらも、夫の仕事のために夢をあきらめ、海外に渡った。乳飲み子を抱える身になっても大学へ通おうとする彼女に、ある日、大きな不幸が訪れる。
ハリネズミは自分のエゴのせいで子どもが犠牲になったと激しく後悔する。しかし、子どもを持ちながら自己実現をしようとするのはエゴなのだろうか。妻となり母となったら自分の夢は捨てなければならないのか。
本作は中盤で読者にこのような問いを投げかけ、最後には前向きな「解答例」を見せてくれる。

「弱者」という言葉は嫌いだが、サリマはいわゆる弱者である。難民で、外国人で、女である。祖国に別れを告げたサリマはしかし、自分一人で生きていく力を手に入れる。たくましく前向きなその姿に勇気づけられる女性は多いだろう。


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