妊婦と読書 ― ことばは、今も。
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梨木香歩「雪と珊瑚と」(角川文庫)
梨木香歩の小説といえば、学生の頃、『西の魔女が死んだ』が好きだった。
あれは確か、不登校の中学生の女の子が、西洋人である、自称「西の魔女」のおばあちゃんから生活の知恵と生きる力を学んでいく、静かな物語だったはずだ。
年長者から若者が「生きる力」を学ぶ、という主題は本書にも通じるものがある。



母親からネグレクトを受け、高校を中退し、結婚するもすぐに離婚。21歳でシングルマザーとなった主人公、珊瑚。
働きに出るために、年配の女性くららに幼子の雪を預けることになった珊瑚は、くららから食べることの大切さ、料理の魅力を教えられる。食に強い関心を抱いた珊瑚は、惣菜カフェを開くために邁進する。
逆境の中、友人たちに支えられ、カフェ開業という夢を実現させる、というサクセススト―リーは、いかにも20代、30代の女性に好まれそうだ。

おかずケーキ、小玉ねぎのスープなど、本書に登場する数々の料理は自然の恵みをたっぷり含んで、いかにも健康的でおいしそうだ。レシピ集などがあったら欲しくなってしまう。実際に料理をしたくなる。
そして、やはり食べることは生きることだと感じさせられる。

しかし、本書にはカフェ開業までの手順が具体的に描かれており、その点は現実的なのだが、どうも話がうまくいきすぎていて、「ファンタジー感」が否めない。そもそも「赤ちゃん、お預かりします」と玄関先に張り紙を出している、素性のわからない女に大切な赤ちゃんをいきなり預けてしまう、という冒頭部分からして非現実的だ。
また、育児を放棄し、現在は何らかの宗教施設にいると思われる珊瑚の母親の人物背景や、珊瑚への敵意をむき出しにする美知恵の心理状況など、気になる部分が明確にされないまま小説が終わってしまう点に、消化不良の感が残る。

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