妊婦と読書 ― ことばは、今も。
本好きOLが妊婦になりました。妊娠生活と、読書記録を綴ります。
プロフィール

ようこ

Author:ようこ
本が好き!雑誌が好き!なアラサーOLです。

これまでの訪問者数

最新記事

カテゴリ

最新トラックバック

月別アーカイブ

最新コメント

フリーエリア

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上橋菜穂子「隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民」(ちくま文庫)
『獣の奏者』『鹿の王』などで知られるファンタジー作家の上橋菜穂子氏は、文化人類学者でもある。
本書は、上橋氏が文化人類学者として、オーストラリアの先住民、アボリジニを研究した結果をまとめた作品である。



日本人が抱くアボリジニのイメージといえば、都会からかけ離れた大自然の中で原始的な暮らしをする人々、といったところだろうか。
本書を読めば、そのステレオタイプがいかに古く、誤ったものであるのかがわかる。
彼らは今や、白人と一緒に町の中で暮らしている。多くのアボリジニが伝統文化を失い、独自の言語を失い、白人との混血が進む中でも、やはり白人とはどこか異なる価値観を抱いて生きている。誰がアボリジニで誰が白人なのか、次第に曖昧になっていく中で、アボリジニは決して遠い存在ではない、「隣人」となっているのだ。

アボリジニが歩んできた歴史はとて悲惨なものである。
かつていくつものも言語と文化を抱えた伝統集団であったアボリジニは白人に武力によって制圧され、劣悪な労働環境のもと、牧童とされた。その後、アボリジニの虐殺、虐待の歴史を経て、政府はアボリジニの保護政策に乗り出す。しかし、それはアボリジニを隔離し、親から子どもを取り上げて公共施設へ収容するというあまりにむごい政策であり、ここで彼らの文化は継承されずに滅んでいくこととなる。差別をなくすべく60年代に導入された白人とアボリジニの平等賃金制度は、大量のアボリジニを失業させ、アル中や犯罪者にしてしまうという結果を招き、現在に至っている。

それでもアボリジニの文化は完全に失われたのではない。親族を大切にする文化、アボリジニ独自の儀礼や「法」は現在も生き続けている。傍観者としては、アボリジニにはその現存する貴重な文化を失わずに生きていてほしいと身勝手なことを思ってしまうが、彼らの文化は決して良いものばかりではない。「法」を犯したアボリジニを殺す恐ろしい呪術師「ジナガビ」、女性蔑視の結婚制度など、そこには負の部分もあり、また白人中心の社会では生きづらさを生んでしまう要素となってしまう点も多いのだ。

人種隔離政策のような明らかな差別がなくなった一方で、これまでの社会的背景により、失業者やアル中のアボリジニが大量に発生している現状はベストだとはとてもいえない。しかし、白人とアボリジニが共存している以上、その衝突を避けることもとても難しい。両者がよりよく生きるためにはどうしたらよいのか。それは非常に複雑で難しい問題である。

本書全体から、アボリジニと真摯に向き合う上橋氏の姿が感じられ、その誠実なお人柄に好印象を受けた。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://booksfan.blog.fc2.com/tb.php/66-c9f632f6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)